水耕栽培のいろいろ


 さて、水耕栽培という呼び方は言葉の意味がすこし広義すぎるので(要するに水だけではないという意味において)お話を進めていく上で正しくは「養液栽培」と言い改めておいたほうが良いかもしれません。

 現在国内で普及している主な栽培方式を3つに大別すると、@ 日本で開発された湛液・循環型のもの。 A イギリスで開発され、改良されたNFT(Nutrient Film Technique:薄膜)水耕 B 礫、砂、ロックウール等の培地を用いる固形培地耕 の3形式になります。じつはJTの「楽農太郎」はこれらの3つを組み合わせた最新?の毛管水耕と呼ばれる方式なのですが、これについては後ほど詳しく説明します。

それぞれの仕組みと特徴について

湛液型の養液栽培

 昭和35年ごろから国内の農業試験場でさまざまな方式の実用化に向けての開発が行われました。その先陣を切り現在に至ってなお、様々な工夫をこらされもっとも普及しているのが「湛液型の循環式水耕」です。装置は系内に多量の培養液を湛水しておき、これを間欠的にポンプで強制循環させ、あるいは各ベッド交互に多量の液を交換させる。その循環の途中で曝気装置を設け、溶存酸素の富化をはかったり、液流を生じさせることにより、根域に生じる界面境界層の形成を小さくし、根への酸素の取り込みを多くしたり、あるいは、間断的にベッド内の液深を浅くして根を直接空中にさらし、大気中の酸素を利用したりするなど、それぞれ独特な方法が取り入れられている。主なプラントは「協和ハイポニカ」、「M式水耕」、「新和等量交換式水耕」がある。

 特徴として次のことがあげられる。 @ 系内に保つ培養液の量が多いので、養分濃度の低下が緩慢であり、濃度調整の頻度が低くてすむ。 A 培養液の循環あるいは交互交換のさいに生ずる液流により、培養液中の溶存酸素の効率的な供給がはかれる。 B 培養液の循環経路に曝気装置を組み込むことにより、培養液中の富化が容易にできる。 C 培養液の循環の過程において、培養液の濃度、成分バランス、pHの調整を行うことができる。 D ベッドの熱容量が大きいので、根圏の温度制御が比較的容易にできる。

 欠点としては、@ 使用する培養液量が多いので、ベッドやタンクは大型のものを必要とする。 A 培養液中の酸素の富化のためのポンプ作動をするのに動力費が多くかかる。 B 培養液の循環・流動により、水媒性の病原菌やネマトーダなどの、地下部伝染性病害虫が蔓延するおそれが払拭できない。 などがある。


NFT方式

 NFT方式は「みかど」に代表され、イチゴに多くみられます。緩傾斜(1/80〜1/100)をつけたフィルムのチャンネル(栽培ベッド)内に培養液を少量ずつ流下させ、タンクに集液し、再び給液、循環を繰り返しながら作物を栽培する。比較的シンプルな装置である。

 NFTの特徴は、@ 構造が簡単で、材料を入手すれば容易に自家施工することが可能であり、装置費が低廉である。 A フィルムは1作ごとに更新するので、ベッド消毒はまったく必要としない。 B 流下させる液深が浅いので、根はマット状に発達し、直接空気にふれるので、根に対する酸素供給は充分に行われる。 C 施工が簡単で、定植や片付けの作業が容易である。 D チャンネルが軽量であるので、容易にベンチ式にでき、低い草姿の作物の栽培(たとえばイチゴ、軟弱小物野菜栽培など)において、作業姿勢の改善にやくだつ。ベッドを2段にも3段にも!できたりする。

 欠点として、@ 施設を簡易にするためタンク容量を少なくしているので、使用液量が少なく、培養液の濃度変化が大きく現れる。 A 根圏温度が室温によって支配されやすく、四季の温度変化の激しいわが国では、その対策が水耕よりむずかしい。 B 適応作物の種類が、現行の水耕方式に比べて限定される。 等があげられる。


固形培地利用による養液栽培

 固形培地利用による養液栽培は、れきや砂が養液栽培の開発初期にもちいられたのにとどまったものの、ロックウールの登場で広く普及したかに見えた。しかし、その成分が玄武岩(デンマーク製)、紘炉滓(国産品)、またはその混合であることから近年は栽培後の処分に問題があるとして敬遠されている。主に育苗用のポットとしての需要が多い。(ように思う)

 れき、砂は省略。ロックウール栽培の特徴はつぎのとおり。@ ベッドに均質な、規格化された形状の、軽量の培地を用いるので、設置がきわめて容易である。 A 培地内に水分と空気が共存するので、根にたいする酸素供給に、なんら特別な装置や操作を必要としない。 B 装置費が比較的低廉である。 C かん注式で給液すれば、培養液を循環することなく栽培できるので、一部発病したときにほかに広く伝播するおそれがない。 D 給液量を加減することにより、生育をかなり調節することが可能である。

 欠点は先にも述べたが、@ 培地による養水分の保持、放出があるので、制御性におとり、再現性がやや低い。 A 栽培される作物の種類が限定され、収穫が困難な葉、根菜類には不向きである。 B 使用済みロックウールの処理方法がめんどうである。ということである。


新しい方式?

 JTの「楽農太郎」の原型は「毛管吸引式」と呼ばれ1979年に、山崎氏により発表された浮根式水耕栽培の原理を応用したものである。浮根式とは、水中に育っている根には根毛が発生しないが、水位を下げて、湿気中に浮上状態にした根には根毛がよく発生する。そのことにより根の表皮細胞の表面積が増大し、酸素が豊富に供給され、培養液の濃度、pHあるいは温度に対する適応幅が増し、有用根圏微生物もおおくなるというものである。

 特徴や欠点は・・・? なんとなく皆さん予想がつくとおもいますが、それを探っていくのがこのホームページのメインテーマなので。今はなんとも言いません!?


 当然のことながら、以上の内容は松戸市21世紀の森近くの県立西部図書館所蔵、園芸大辞典?トマトの巻??(のような名前だったとおもいます。すいません!)より引用、参考にさせていただきました。ありがとうございました。


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